そのような、概ね安定したリファレンスポイントを作る幾つかの実際的な方法があります。より一般的な方法においては、二つの主なグループに分類されます。
単波長センサは、その内部のエネルギー信号の伝達に、既知の濃度の混合ガスや自然の新鮮空気など、センサ外部のリファレンスポイントを参照させます。これに対して、二波長センサは、単波長センサの構成に加えて、センサ内部にリファレンスポイントを備えています。この二番目の内部リファレンスは別の光源、二番目のディテクター、あるいは、同じディテクターの多波長フィルタで構成されます。これら二つの方法にはそれぞれ長所と短所があります。
二つのエミッターで作られたセンサでは、主のエミッターが連続的な測定を行い、二番目のリファレンスのエミッターはより遅い時間インターバル、例えば1日に1回の頻度で測定を行います。この方法では、リファレンスエミッターの消耗や劣化は、連続的な測定を行う主のエミッターに比べて無視できる程度、従って、センサにとってこのエミッターは、工場校正以降、固定したリファレンスと見做せるという考え方です。主のエミッターはそのライフタイムにおいて40,000回以上点灯すると考えられます。センサは二番目のリファレンスエミッターからの信号を受け、それを主のエミッターと比較することによって、主のエミッターの信号強度の消耗・劣化を計算し、補正します。この方法は、実際的には、必ずしも期待通りには動作しません。ドリフトや経年劣化には、エミッターの信号の劣化によるもの以外に、多くの原因要素があることがその理由です。加えて、このセンサの構成は、価格にインパクトを与え、電子部品の実装を窮屈にし、センサのサイズを大きくしてしまいます。
また、二波長センサでは、ひとつのディテクターが、測定されるガスのスペクトル吸収を検知し、二つ目のリファレンスディテクタ―は常にガスが何も吸収されないスペクトルフィルタで測定するだけです。このように、センサには、各測定に関係するエミッター劣化の影響、光学系の曇り、その他、両方のディテクターに達するエネルギーの変化をもたらす要因があります。この二波長センサの構成の欠点は、センサが、検出するエネルギーにおいて、二つのティテクター間の比率が常に変わらず同じであると見做すことです。それは長い時間のスパンで考えると正しくなく、さらに、限定されたエネルギー出力が二つのディテクター間で分割される必要があるため、S/N比を悪化させます。
単波長センサは、その構成においてよりシンプルです。性能を悪化させ得る二つのリファレンスがセンサ内部には存在しません。センサがリファレンスとするのは外部の要素であり、それは内部の全ての個別コンポーネントに由来する劣化やドリフトを吸収することになります。センサは濃度が既知の校正ガスを使用するか、設定された期間中にディテクターが検出した最大のエネルギー放射をリファレンスとしてメモリに保持します。このメモリに保持されたリファレンスは新鮮空気のベースライン、すなわち、ガスが自然に到達した最低の濃度と相関するものと見做されます。このベースラインへの暴露が散発的に繰り返されるとき、センサはその内部の全てのコンポーネントを補正するための、ほぼ固定のリファレンスポイントを、そのライフタイムにわたって持てることになります。単波長センサはよりシンプルな構成、最小限のサイズ、長期にわたって精度、信頼性のある測定を行うための効率の良いソリューションです。
では、時間とともに元の特性ではなくなりがちな二波長センサはどのような場合に有用でしょうか。工場校正後あまり時間が経過しておらず、内部のリファレンス動作が不調をきたす前であれば、センサ内部のリファレンスが迅速な自己調整や校正に有効に動作します。その場合、二波長センサは極めて優れた測定精度を提供します。単波長センサの場合は、散発的な新鮮空気のベースラインの取込みに時間を要するため、そのように優れたパフォーマンスを持つことはできません。しかしながら、新鮮空気をリファレンスとして、センサの組立時、輸送中、取付け時に発生し得るドリフトをも一括して補正する自己補正機能は、センサのライフタイムにわたる信頼性を提供します。